グローバリゼーション・国際システムの今後と人々の自由

東京会議第2セッション開会


第2セッションでは、第1セッションに引き続き主要10カ国のシンクタンクトップの他、日本政府から浅川雅嗣財務官、ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)委員から長谷川閑史氏が参加した。
テーマは「グローバリゼーションと国際システムの今後」。
グローバリゼーションは現在様々な問題に直面している。
これらの問題を解消するため、国際システムは今後どうしていくべきなのか、報告や意見交換が行われた。


国際政治が直面する「トリレンマ」


浅川氏はまず、上海株の暴落やイギリスのEU離脱に関する国民投票、アメリカ大統領選などを挙げて、去年の国際金融市場には大きな波乱があったと振り返った。
その上で、為替レートの安定、金融政策の独立性、国際的な資本移動の自由の3つは同時に成り立たないという「トリレンマ」を引き合いに出し、国際政治も同じように、民主主義、ナショナリズム、グローバル化の3つが国際政治のトリレンマとして注目を浴びていると言及。
また、グローバル化が進んだ社会では、「多国間主義、グローバリズム」と「地域主義、二国間主義」の2つの政策協調があり得ると指摘している。

国際金融の今後に関しては、3つのリスクが挙げられた。

1.トランプ政権下でのアメリカの経済政策のあり方
アメリカは超金融緩和政策を終えて出口政策に突入し、財政政策へと軸足を移動している。
G20の議論やトランプ政権の主張がどう展開していくかに注目が必要。

2.イギリスとEUの通商協定、日米を含めた3国との貿易交渉の行方が不透明であること。
この他、ヨーロッパは大型選挙を相次いで控えているため、その行方も世界経済のリスク要因である。

3.中国経済
中国は資本流出の勢いが止まらず、資本流出規制などによって人民元の暴落を抑えようと努力している。
資本流出の背景には、過剰生産設備、不良債権問題などがあり、これらの課題に対する中国政府の動向に注目したい。


国際システムの今後


基調報告を終え、議論は「グローバリゼーションと自由な国際システムが今後どうなるか」のテーマに移った。
ジェームズ・リンザイ氏は、トランプ政権の性格を「自由で公正な通商という信念を持ちつつも、多国間協議には懐疑的で、二国間対話によってアメリカが優位に立ち、公正な分け前を得られると考えている」と分析する。
こうした主張の背景として、国際機関や国際法によってアメリカの主権が損なわれるという考えがあると指摘。
アメリカ通商代表部が提出した通商政策に関しては、国際通商システムに動揺が広がること、アメリカの同盟国にも影響が及ぶことを予想した。

長谷川氏は、トランプ現象の背景には反グローバリズム、AIなどの発達による失業の不安、不平等の問題があるとの見解を示した。
さらに、グローバリゼーションに関して人々がポジティブな影響を実感するには時間がかかるのに対して、ネガティブな影響は瞬時に起こるため、この時間差がグローバリゼーションへの反対意見を引き起こしていると指摘。
また、自由民主主義によってグローバル化の進行やGDPの成長などの成果が表れたとした上で、成果の配分は富裕層に偏っており、これを調整するメカニズムを見つけなければならないという問題提起を行った。


○G7、G20の今後

カナダの国際ガバナンス・イノベーションセンター総裁のロヒントン・メドーラ氏は、浅川氏の問題提起に触れて、各国の国内政策によって合法的な違いを作り出せばグローバリゼーションの負の側面の対処することができると述べている。
新興国側からは、貿易ルールを無視したアメリカや中国の行動、中国の海洋進出の動きを挙げ、強者の勝手な振る舞いを弱者は受け止めるしかないという現状が指摘された。
イタリアのエットーレ・グレコ氏は、国際金融について新たなバブルの危機に直面していると分析。
今年のG7は、金融政策・財政政策・構造改革のポリシーミックスについて、各国間でどのような国際協調を実施できるのかが議論になると見られる。
ドイツ国際政治安全保障研究所調査ディレクターのバーバラ・リパート氏は、G7、G20に関して、アメリカが多国間、二国間のどちらの主義に向かうのかを理解することが最も重要であるとしている。
G7、G20の場を通して政府や利益団体が政治的な立場を明らかにすること、欧州委員会がアメリカに対して貿易紛争の報復をすることなどしてアメリカを多国間主義に引き戻す必要があると主張した。


人々の自由を守るためには


グローバリゼーションは、世界中の多くの人間の共通の利益であることが重要である。
しかし、グローバリゼーションによる成果・利益は一部の富裕層に還元され、多くの人に利益が配分される仕組みはまだ開発されていない。
ポピュリズムの抑制や、G7の合意を実現させるためにも、この問題を解決させる必要がある。
また、グローバリゼーションの利益を伝えるためには、教育の基盤を固めなければならない。
自由を守るためには、国内の民主主義を強化するとともに、多国間による課題解決の枠組みを守り続けることが重要になるだろう。
今後も意見交換、課題解決に向けた議論を継続して行うことが必要になる。

  • 最終更新:2017-11-17 10:42:10

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