トランプ新政権は今後世界にどのような影響をもたらすのか

東京会議に先駆けた公開セッション


言論NPOでは日本・アメリカ・イギリス・ドイツ/フランス・イタリア・カナダのG7参加各国に加え、インド・インドネシア・ブラジルの3ヶ国のシンクタンク代表者を集め、民主主義や世界の将来について話し合う「東京会議」を開催する予定だ。
今回開催される東京会議では、グローバルな課題を議論し合い、2017年G7タオルミーナ・サミットの議長国であるイタリア政府に対し、東京会議で出た意見などをまとめて提案することを目的に立ち上げられたものである。
そのため、東京会議に先駆けてプレ企画とし、グローバル課題についての議論を言論NPOでは開催している。
第2回となる今回は、トランプ新政権が世界経済や自由貿易にどのような影響を与えるのか、将来的な部分を議論する公開セッションとなる。
セッションに迎えたのは、東京大学総合文化研究科教授・古城佳子氏、慶應義塾大学総合政策学部教授・渡邊頼純氏、東京大学政策ビジョン研究センター教授、前IMF副専務理事・篠原尚之氏の3氏である。
司会は言論NPO代表でもある工藤泰志氏が務めた。


今までのルールが壊される可能性も考えられる


トランプ新政権が発足後、すぐにTPPからの離脱や保護主義的政策を述べていることに対し、まず司会の工藤氏からアメリカの通商政策がどのように変化していくのか、今後の見通しについて3氏に尋ねた。
まず、それぞれ共通した部分として、今まで国際社会が少しずつ長い時間をかけて作り上げてきたルールなどが壊されてしまうのではないかという懸念である。
古城氏からは、トランプ大統領について多国間主義に興味がなく、これまでの積み重ねてきたものが壊されてしまうのではないかと不安に感じているとのこと。
さらに篠原氏も同意しており、加えてトランプ大統領の貿易に対するゼロサム的発想は危険であると指摘した。
さらに渡邊氏からは、TPPのルールに関してそれほど吟味せずに離脱を発表したのではないかと推測している。


トランプ大統領の公約が実現された場合、世界はどのように変化していく?


トランプ大統領は演説の時から過激な公約を述べてきた背景がある。
就任した以上公約を実現させていく流れになるかと思うが、実際に公約が実現された場合、アメリカだけではなく世界はどのように変化していくのだろう。
例えば、関税を引き上げるという公約があるが、これに対して古城氏はWTOのルールがある以上公約を実現させるのは難しいとしている。
また、篠原氏はトランプ大統領の中国に対しての言葉の攻撃(中国に対し為替操作国であると述べている)に関しては、あくまでも目的は中国市場への参入であり、言葉の攻撃は証拠不十分で徐々に攻撃することもなくなっていくのではないかという見方をしている。
渡邊氏からはトランプ大統領の2国間交渉を重視するということを踏まえて、アメリカの力を誇示しやすいと考えている可能性が高いという見方だ。
ただ、懸念すべき問題としてはアメリカにとってアジアや太平洋地域の成長力を取り込むためにも、TPPは活用すべきと考えられるが、管理貿易協定になってしまうかもしれないと警鐘を鳴らしている。


アメリカが変化したのはグローバリゼーションの問題も関与している


元々アメリカ政府はグローバリゼーションのもとにコントロールされ、マイナスの影響を受ける方に対して十分なサポートまでできていたが、金融がグローバル化したことでマイナスの影響を受ける方にもサポートができなくなってしまい、国民の不満が高まってしまった。
この結果を受けてトランプ大統領が誕生した背景があると古城氏は指摘。
篠原氏もグローバリゼーションによって海外雇用が充実してしまったせいか、所得不平がみられるようになったという見方をしている。
渡邊氏からも、グローバル化によって国際分業が進展し、先進国内の貧困化が拡大してしまったと指摘。
さらに先進国では第一次産業から第二次産業・第三次産業への移行が進んでいるが、この移行は高度な教育を受けることは欠かせないものであり、貧困化が進む中で高度な教育を受けられない先進国の子どもが増えてきていると述べた。
トランプ大統領は自由貿易の結果、貧困化が進んだとしているが、実際のところは自由貿易が問題なのではなく、産業構造が変化していったことで構造転換できなかったことが問題だったと考えられる。


トランプ新政権は今後世界にどのような影響をもたらすのか


今回の議論を踏まえて、トランプ新政権によって貿易関連はもちろんだが、その他にも影響が出てくる可能性が高い。
特に今まで作り上げてきた国際社会でのルールを破壊し新しいものを作り上げるとなると、たくさんの時間が必要となり、各国での混乱は避けられないだろう。
東京会議では各国シンクタンク代表者を集めて議論が行われるが、今回の議論のようにアメリカが世界に与える影響についても議論すると考えられる。
そのため民主主義や自由貿易を守るために必要なことを東京会議でも話し合い、結果をG7へ提言することが重要である。

  • 最終更新:2017-11-17 10:49:30

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