笹川平和財団米国との共催フォーラム、民主主義が発展するための日米協力

言論NPOと笹川平和財団米国との共催フォーラム


2017年4月10日に言論NPOと笹川平和財団米国との共催でフォーラムを開催。
近年ポピュリズムが問題化されてきている中で、「民主主義の発展に日米は今後どのように協力すべきか」と題し、行われた。
16時開始だったが、用意されていた約60席は既に15時半の時点で埋め尽くされるほどの盛況を見せた。
議論の内容としては笹川平和財団米国が出版予定の「民主主義の発展に向けた日米の取り組み」をベースとし、日米が今までどどのような取り組みを行なってきたのか、そして未来に向けた今どのような取り組みを行っていくことが重要なのかということについて議論が交わされたのである。
フォーラムは前・後半に分かれ、前半では民主主義が変容してきていることに対しての認識、後半では本の著者による具体例を交えた報告が行われた。


フォーラム前半、世界の民主主義に対する課題点


フォーラム前半は世界の民主主義に対して、笹川平和財団米国会長のデニス・ブレア氏と国際文化会館理事長の明石康氏による対談形式で進められ、司会を言論NPO代表工藤泰志氏が務めた。
まず初めに司会の工藤氏から、現在の民主主義が後退してきている問題とポピュリズムの問題は一つにまとめて考えるべきではないと指摘し、民主主義の発展のためには民主主義のあり方を今一度考え、どう促していくのかがこれからの課題であるとしている。
この意見をきっかけにフォーラム前半が幕を開けた。

まず最初に話し合われたのが、現在の民主主義に対する認識である。
ブレア氏からは民主主義が世界中に拡散されたが、2000年以降からは徐々に民主主義が交代しているとフリーダムハウスからの調査で明確になったこととし、政治制度等は民主主義を主張しているが、結果的にメディア・政府によってある程度情報規制され、独裁に近いものがあるとしている。
特に今年のアメリカ大統領選挙でトランプ氏が選出されたのは、アメリカ国内でポピュリズムが拡大した影響だろうとした。
次いで明石氏からも民主主義を根付かせるのは難しく、現在のアメリカのポピュリズム問題に対して対策が必要だと指摘している。
さらに、トランプ政権の評価へと続き、ブレア氏からは「トランプ大統領は今民主主義の何たるかを学んでいる」とし、明石氏からは「トランプ氏のOJTはアメリカ国民、その他の国の人々にとって、(いろいろなコスト)が高くついている。例えば、今日、トランプ氏は巡航ミサイルでアサド政権に攻撃した。いまアメリカがやるべきことは、アメリカ国内の全ての人に機会を与えることではないか。アメリカは所得の格差が拡大し過ぎている。」と指摘した。
2人はトランプ政権に対する評価をそれぞれの目線で述べ、アメリカの民主主義はどうなるのかを意見し合った。

また、中国の民主主義に関する評価はブレア氏と明石氏の意見が分かれている。
ブレア氏の場合、中国の民主主義は徐々に拡大しつつあること、そして今後民主主義化に向けて関与していくべきという姿勢を見せた。
一方の明石氏は慎重な意見で、中国の政治を見ると民主化はまだまだ行われていない中でも中国は教育などで大きな発展がみられているとし、民主主義に政治が一気に傾いてしまうとかえって政治的混乱を招いてしまうのではないかと指摘。
さらに、民主主義に関して日本から中国に対し助言するのは、歴史上の問題からも難しいことであるとした。


フォーラム後半、民主主義支援はどう進んでいくのか


フォーラム後半では本の著者から具体例の報告が挙げられたが、中でも注目されたのはフォーラム前半でも話し合われた中国についてである。
アフリカ現代政治を専門としている東京大学大学院総合文化研究科教授・遠藤貢氏からは、「第1セッションの最後に、市民社会は欧米で民主主義を構想する上で重要との指摘があったが、当初、アフリカでは市民社会といっても誰も理解してもらえなかった。数年後、市民社会という話をすると、私たちが市民社会であると言い出した」とし、背景として市民社会をサポートするアプローチが進められていたことを報告した。
ただし、アフリカの民主主義が後退する可能性があると指摘。
その要因として中国の関与が挙げられた。

また、東京大学大学院総合文化研究科教授・佐藤安信氏からはカンボジアでの体験を報告。
そして民主主義を実現させるためには法と官僚の重要性を指摘した。
さらに佐藤氏からはミャンマーの民主化について、中国の支援によるものが大きいとし、対等的な立場で支援を行うことやアメリカの世界的企業やJICAと協力しあい、面でサポートしていくことが必要だと訴えた。


世界の民主主義促進への課題


世界の民主主義に関する具体的な事例が今回のフォーラムで報告されたが、中国に関する問題は極めて重要であると考えられる。
ただし、世界の各国から中国に対して意見するというのは難しい点となることが予想できる。
中国だけに言えることではないが、民主主義促進を図るには一つひとつの課題に対して丁寧にクリアしていく必要があるだろう。
今後、世界の民主主義はどうなっていくのか、国民全体で注視すべきである。

  • 最終更新:2017-11-17 10:41:31

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