2016年末、安倍政権4年目を評価~外交・安全保障~

安倍政権4年目の実績を評価


毎年年末に言論NPOで実施している政権の実績評価、今回は外交・安全保障をメインに据えた評価を行った。
実績評価のセッションに参加したのは、慶應義塾大学政策学部准教授・神保謙氏、さらに政策研究大学院大学教授・道下徳成氏である。
司会は言論NPO代表を務める工藤泰志氏が行なった。


2015年、最高点に達した理由


2015年末に行われた安倍政権3年目の実績評価では、外交・安全保障に関して5点満点中3.6点を獲得するという、今までの最高点を叩き出した。
昨年最高点が出された理由として、安倍政権が3年目を迎え、国内基盤が安定してきたことが言えると神保氏は解説。
これに関しては、外交問題評議会会長のリチャード・ハース氏の"Foreign policy starts at home"(外交は国内基盤から始まる)という言葉からなるもので、安倍政権の国内基盤が安定してきたからこそ、外交でも安定性が見え、成果を挙げたとしている。
安倍政権が発足される前は1年間に1回総理大臣が変わっていたということもあり、国内が安定してこなかったが、安倍政権が続く中でアジェンダを決めてしっかり交渉を繰り返したことが評価のポイントになったとしている。


2016年、外交・安全保障の実績評価


2015年の実績評価を振り返りつつ、まず司会の工藤氏から、積極的平和主義を積極的に実践するという項目、日米同盟を主軸に近隣諸国との関係改善の流れを加速するという項目、さらにオーストラリアやインド、ASEAN、ヨーロッパなどの国々との連携強化という項目について、実際2016年の安倍政権ではどのような成果を挙げたのか、問われた。
一つ目の積極的平和主義の項目では、元々日本は孤立主義であったが、安全保障の問題から積極的平和主義に変わりつつある。
韓国との関係についても、課題はまだ山積しているものの、安全保障関係は段々と良くなってきており、軍事情報包括保護協定でも日韓で秘密度の高い情報を共有・交換することができるようになってきていると道下氏は述べた。
また、神保氏からはここ数年、国際情勢が大きく変化しており日本もグローバルな課題について積極的に取り組んでいるように感じるが、実は近隣諸国の問題にのみ積極的であり、他の国において積極的な取り組みをしたのかと言われるとそういったわけでもないとの意見を示している。
結局積極的平和主義では何を達成し、解決しようとしたのかがわからないため、もう少し考えてみる必要があるということを指摘した。


具体的な外交・安全保障の評価


その後はより具体的な項目を挙げ、外交・安全保障の評価を行っている。
例えば、北朝鮮問題に対しては、2016年には2回の核実験を行っている北朝鮮に対して、日本の対応としては2003年より取り入れられたミサイル防衛システムを利用し、現在はイージス艦に載せているSM-3、地上配備されたペトリオットPAC-3が配備されている。
これに関し道下氏は、ミサイル防衛の対応に関してはしっかりとできているが、ミサイル防衛にかかる膨大なコストをどう考えているのかが問題点でもあると指摘。
同時に北朝鮮に対してもう少しポジティブな方向へ動くための対話が必要であると述べた。

また、日本が安定的な平和を実現していくためには何が必要かということに関して、神保氏は以下のように述べている。
「平和は何によって成り立っているのかという議論にもよるのですが、一つは力、もう一つはまさに経済的相互依存、最後は制度みたいな話になると思う。
力というものは常にムービングターゲットで移動をしているものですから、力による均衡が今成り立ったとしても、それが5年後に同じように成り立つかどうかは分からない。
ただ、冷戦時と違うのは、米ソのようながっちりした2極構造ではないので、非対称的というか階段みたいになっていて、その中でどういう力があると「力による現状変更が起こるのか起らないのか」ということを米中も考えるし、日中も考えるし、フィリピンと中国も、ベトナムと中国もまた別のロジックで考える。
「これだったら勝手なことできないよね」というかたちの力の構図ができるかどうかがすごく大事なポイントだと思う。」
さらに、ASEANの国防相級会議や東アジアサミットなど、重要な会議ではあるものの、中国や他の国に対して何か具体的に行っているのかというと、まだ間接的であったり、一時的なものとなってしまっている場合が多いため、制度の強化から外交の強化につなげることが必要だと述べた。


今回の実績評価・総評


今回の外交・安全保障に関する実績評価では、昨年に比べて点数は下がってしまった。
しかし、日本の方向性などは具体的なものになってきており、活発的な外交・安全保障が進められた部分も多くみられる。
世界情勢が大きく変化していることから、日本はさらに外交・安全保障について動いていかなければならないだろう。
北朝鮮問題や世界規模で多発しているテロ活動、民主主義に関する問題など、日本が抱える国際的な問題も少なくない。
こうした問題に対し、いかに迅速で適切な行動をしていくのかが5年目を迎える安倍政権の外交・安全保障に関する課題となってくるだろう。

  • 最終更新:2017-11-17 22:02:30

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